里山をあるく。鳥の鳴き声が林の方からきこえてくる。
畑をしている人にであって会釈すると、会釈がかえる。
まわりの田んぼは、だいぶん黄色くなってきている。
休耕田ではピンク、赤、白、エンジ色のコスモスが太陽の光をうけている。
花の裏から太陽の方をみるとすきとおって光がみえる。
林の中へはいると足元にクリの実があちこちにおちている。
柿の実が色づき、ススキが風になびき、傍にはワレモコウ。秋の風景だ。
10月のはじめ。朝6時になってあかるくなる。早朝の草むらはしずかでムシの気配はない。
にぎやかな一日のはじまる前、朝露にぬれた草むらにいってみる。
昼間ならうるさいぐらいに、バッタがとびかうのだ。
草の一本一本をみるような気持ちでみてまわる。朝露で靴がビショぬれになる。
もちろん長靴をはいている。
注意ぶかくさがすと、バッタが草につかまってじっとしてうごかない。
ショウリョウバッタ、ツチイナゴ、ヒナバッタ、ヒシバッタなど、いろいろいる。
五センチぐらいのツチイナゴをみつけた。おおきな目には水滴がつぶつぶとついている。
背中の毛も、前脚にも水滴が無数についている。まるで雨にあたったようだ。
ふとみると、目の前をイトトンボがすこしとんではとまる。
まだ力がでていないようだ。アオイトトンボだろうか。
みると背中にバッタとおなじように水滴がいっぱいついている。
背中だけでなく翅にもついている。ムシたちはいっぱいいたのだ。
ただじっとしていただけなのだ。「もうすこし時間をください」というようにうごけるまで耐えているようだ。
やがてしずかな朝の時間がすぎると、この草むらをとびまわるのだ。一日がはじまる。
林のほうへあるいてみる。奥まった木の葉の上に黄色いムシがいる。
ちかづくと横バイにはしってにげる。そして葉の裏にかくれてしまう。
ツマグロオオヨコバイだ。黄色い体に黒い斑点がある。黒目が愛らしい。
さらにその辺りをみまわすと、ベッコウ色のハチのようなアリのような翅のある奇妙なムシがいる。
ヤマトシリアゲムシだ。お尻をピンとあげて口は嘴のようにながい。
嘴のようなものは黒い色をしている。
草むらにカナヘビが身うごきもせずにじっとしている。目はするどい。
ちかづいてもそのままの姿でいる。
シオカラトンボがスッとまいおりた。寝そべってトンボの目の前にちかづく。
するとふわっととんだかとおもうと、すぐにまたおなじ場所にもどってくる。
カメラの焦点距離ギリギリに目の前一センチぐらいまでよる。
トンボはにげずにおおきな目をこちらにむけている。ご対面だ。
こうしてムシたちをさがしてあるくのはたのしい時間だ。
秋風のふく気持ちのよいとき。里山の木陰にイスとテーブルをだして朝食の時間だ。
コンロでコーヒーをわかして、もってきたパンを焼く。
友人としゃべりながらこの気持ちのよい時間をすごす。
里山での至福の時だ。