片手に稲の苗をもって
田植えのすんだ畦をあるきながら
植えこみがまだらになったところに
苗を手でうえている
「もうこんなこと、せんでもええんですけどね。」
そういいながら畦をあるきながらも、ときどき田んぼのなかへはいってゆく
足をぬくのにちょっと、コツが必要だ
「わたしが嫁にきたんが昭和43年やから、昭和50年ぐらいまでは手でうえとったね」
「嫁にきた時分は田植えのときは朝4時におきて田んぼにいってましたわ」
「手でうえるのん、そんなにむつかしいことなんかないですよ」
ついでに秋に刈りいれがおわったあとに
田んぼに稲わらをつんだ、家型のものがあるけれど、
その名前をなんというのかきいてみた
「ワラグロっていうね。ツボキ?ツボキもいうね」
「グロ」がつかわれている
「ワラグロ」ときいて、うれしくなった
柳田国男がこんなことをかいている
「わたしなどのうまれ故郷ではツボキ、
これはおおくのこういう形をしたものに、共通した名のようにおもわれる。
瀬戸内海の周辺をすこし西へゆくと、グロという土地がおおく、
これも土偏に丸の字などをかいて、塚の意味にもちいる地方があるから、
グロはたんなる堆積のことであっただろう。」
麦の借りいれがおこなわれている
刈っているのがコンバイン
刈りとりと選別をやってしまう機械だ
ワラくずなどはふきとばし、茎も排出する
粒だけを貯蔵してゆくのだそうだ
麦は小麦だときいた
稲美町は日本有数の大麦の産地なのだということだった
枯れすぎているのかとおもっていたら
はえたまま、乾燥させているのだということだ
ふつうは刈ってから2週間ほど竿にかけてほすのだが
最近はこうしているそうだ
この田んぼは稲はつくらない
耕作面積がきめられているのだ
さらにjitenshaをはしらせていると
数人のひとがこの唐箕のまえで話をしていたので
jitenshaをとめて写真をとらせてもらう
「ほんなら、モデルになったろか」
空の唐箕をまわしてくれた
「これ、現役やで。めずらしいやろ」
「ここにあんのんは、来年用の麦の種や」
「問題はこれや」
みせてくれたのは種にまぎれている草の種
あちこちにみられる
「このまま播いたら、また草だらけになんねん」